
M&Aノウハウ
最終更新日: 2026/10/16

「後継者が見つからない」「ドライバーの採用や車両の更新に負担を感じている」「従業員と荷主との関係を大切にしながら会社を引き継ぎたい」。運送会社・物流会社の経営には、事業の継続と成長を両立するための判断が求められます。
M&Aは、こうした課題に対して、他社の資金・人材・拠点・営業基盤を取り入れる選択肢です。一方で、輸送を止めずに引き継ぐためには、価格だけでなく、ドライバーの処遇や運行管理、荷主との契約を確認する必要があります。
この記事では、2025年の物流業界のM&A件数と実名事例3件を紹介し、運送会社・物流会社の売却価格を左右するポイントや、事業承継の進め方を解説します。
目次
運送会社・物流業界のM&Aとは、株式譲渡や事業譲渡などを通じて、会社や事業を他社へ引き継ぐことです。対象には、トラック運送、倉庫・保管、冷凍・冷蔵物流、物流業務を包括的に受託する3PL、国際輸送を手配するフォワーディングなどが含まれます。
売り手にとっては後継者問題への対応や事業の継続、買い手にとっては輸配送網や顧客基盤の拡充などが目的になります。同じ物流業でも事業内容は異なるため、自社の強みが買い手のどの課題を解決できるのかを整理することが大切です。
スピカコンサルティングが公表した「2025年12月物流業界M&Aまとめ」によると、2025年の物流業界のM&A件数は140件を超え、過去最多となりました。同資料では、2024年は約120件とされています。
出典:スピカコンサルティング「2025年12月物流業界M&Aまとめ」(2026年1月16日更新)
この数字は、同社が公表した物流業界全体の件数です。トラック運送会社だけの件数や、非公表案件を含む国内の全成約件数を示すものとしては扱いません。また、同資料では年間集計の詳細条件が示されていないため、異なる調査の件数と単純に比較することには注意が必要です。
運送会社では、ドライバーの確保に加え、無理のない配車や労働時間管理が重要です。2024年4月から改正された改善基準告示が適用され、拘束時間や休息期間などを踏まえた運行管理が求められています。
また、物流効率化法では、2025年4月から荷主・物流事業者に物流効率化の努力義務が課されています。2026年4月には一定規模以上の特定事業者に関する措置も施行され、中長期計画の作成などへの対応が必要になりました。
出典:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」
出典:国土交通省「物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)」
M&Aを検討する際には、相手企業と拠点や配送ルートを組み合わせることで、空車での走行や荷待ちを減らせるか、管理体制を強化できるかが判断のポイントになります。
以下は、各社が公表した業界のM&A事例であり、シェアモルM&Aの仲介実績ではありません。
公表日 | 2025年4月11日(公開買付けの成立を発表) |
|---|---|
買い手 | JWT株式会社(日本郵便株式会社の子会社) |
対象会社 | トナミホールディングス株式会社 |
公表された取引 | 公開買付け(TOB)の成立。経営陣等と共同でMBOを企図 |
日本郵便株式会社は2025年4月11日、子会社のJWT株式会社を通じて実施したトナミホールディングス株式会社への公開買付け(TOB)が成立したと発表しました。
本件は、日本郵便とトナミホールディングスの創業家代表・経営陣による共同コンソーシアムが、マネジメント・バイアウト(MBO)を企図して実施したものです。発表資料では、両社の協業による付加価値の創出を目的として掲げています。
出典:日本郵政・日本郵便「日本郵便の子会社(JWT株式会社)によるトナミホールディングス株式会社の株式に対する公開買付けの結果について」(2025年4月11日)
この事例は、経営陣が関与しながら外部企業と資本面で連携する方法を示しています。承継後も経営に関わりたい場合には、持株比率だけでなく、役割や意思決定の範囲を明確にすることが重要です。
取得完了日 | 2025年5月20日 |
|---|---|
買い手 | SG HOLDINGS GLOBAL PTE. LTD(SGホールディングス株式会社の子会社) |
対象会社 | Morrison Express Worldwide Corporation |
公表された取引 | 全株式の取得 |
SGホールディングス株式会社は、子会社のSG HOLDINGS GLOBAL PTE. LTDを通じて、台湾に拠点を置くMorrison Express Worldwide Corporationの全株式を2025年5月20日に取得しました。
Morrison社は、電子部品・半導体の航空フォワーディングに強みを持つ企業です。SGホールディングスは、グループが持つ海上輸送の強みと組み合わせ、新規顧客の獲得や事業エリアの拡大などを目指すとしています。
この事例からは、物流会社の価値を考えるうえで、特定の貨物を扱う専門性や顧客基盤も重要な視点になると分かります。
取得完了日 | 2025年10月1日 |
|---|---|
買い手 | SBSホールディングス株式会社 |
対象会社 | ブリヂストン物流株式会社 |
公表された取引 | 普通株式66.6%の取得 |
SBSホールディングス株式会社は2025年10月1日、ブリヂストン物流株式会社の普通株式66.6%の取得を完了しました。これにより、ブリヂストン物流はSBSグループに加わりました。
株式譲渡を発表したブリヂストンは、SBSグループのネットワークや物流技術などとの相乗効果を通じて、外販機会の拡大やタイヤ物流の持続可能性向上を進める方針を示しています。
出典:SBSホールディングス「ブリヂストン物流の株式取得完了のお知らせ」(2025年10月1日)
ブリヂストン「ブリヂストン物流株式会社の株式譲渡について」(2025年6月30日)
この事例は、メーカーの物流子会社が物流専業グループに参画する形です。既存荷主との関係を維持しながら、他の顧客へのサービス展開を目指す際の参考になります。
親族や社内に後継者がいなくても、第三者への承継を検討できます。経営者自身が担っている営業、配車、資金繰りなどを整理しておけば、買い手と引継ぎの範囲を話し合いやすくなります。
買い手との合意により、従業員の雇用や取引関係の継続を目指せます。ただし、雇用や待遇が自動的に保証されるわけではありません。給与体系、勤務地、業務内容、説明時期などを具体的に協議することが大切です。
買い手の経営資源を活用し、車両更新、倉庫設備の改善、採用活動、配車システムの導入などを進められる可能性があります。契約前に、必要な投資額と実施時期、費用負担について確認しておきましょう。
売却価格は、売上高や保有車両数だけでは決まりません。継続的に生み出せる利益、保有資産、借入金、将来の投資負担、買い手との相乗効果などを総合的に検討します。一律に「売上の何倍」と決めるのではなく、自社の実態に即して評価する必要があります。
主要荷主との取引年数、契約期間、荷主別の売上・利益、運賃改定の状況などが確認対象になります。売上規模が大きくても、特定荷主への依存が高い場合や採算が低い場合は、その継続性と改善余地を説明できるようにしましょう。
ドライバー数だけでなく、年齢構成、勤続年数、離職状況、必要な免許・資格、運行管理者や配車担当者の体制も整理します。経営者が退任した後も現場が安定して動くかどうかが重要です。
車両の年式、走行距離、整備状況、リース残高、倉庫や車庫の所有・賃貸の区分などを確認します。売却直後に多額の更新費用が必要な場合、その負担が価格交渉に影響する可能性があります。
未払い残業代、社会保険の加入状況、事故・保険の履歴、行政処分歴、点呼・運行記録などは、買収監査で確認される重要な項目です。問題があれば早めに把握し、是正状況を説明できるようにすることが交渉の土台になります。
株式譲渡は、会社の株主が変わる方法です。事業を営む法人は存続するため、会社単位での承継を検討する際の選択肢になります。ただし、株主変更時の通知・承諾を定めた契約や、役員変更等に伴う手続きの確認は必要です。
事業譲渡は、対象とする事業・資産などを選んで引き継ぐ方法です。一部の営業所や事業だけを譲りたい場合にも検討できますが、契約や雇用の承継、許認可などを個別に整理する必要があります。
一般貨物自動車運送事業の譲渡し・譲受けには認可制度があります。事業譲渡を行えば許可も当然に移るとは考えず、対象事業と手法に応じて管轄運輸局へ事前に確認しましょう。
出典:国土交通省「一般貨物自動車運送事業の譲渡し及び譲受けの認可」
売却時期、譲渡対象、希望価格に加え、従業員の雇用、社名、営業所、経営者の引継ぎ期間などの優先順位を整理します。
決算書、月次試算表、荷主別売上、車両一覧、従業員の情報、許認可、主要契約などを準備し、事業の強みと課題を確認します。
情報開示の範囲を段階的に管理しながら候補先を探します。実名開示の前には開示先を確認し、秘密保持契約を踏まえて必要な情報を提供します。
価格や譲渡対象などの基本条件を整理した後、買い手が財務・税務・法務・労務・運行管理などを調査します。
最終条件を合意し、必要な認可・承諾などを取得したうえで、対価の支払いや株式・事業の移転を行います。経営者保証の解除についても、金融機関と具体的に確認します。
荷主への説明、配車、請求、給与支払い、事故対応などを引き継ぎます。輸送品質を維持するため、システムや運行ルールの変更は現場への影響を確認しながら進めます。
検討は可能です。規模に加え、地域の配送網、継続取引のある荷主、ドライバーの定着、特定貨物への対応力などを整理することが重要です。買い手のニーズや財務・管理状況によって、成立の可能性は異なります。
相談は可能です。赤字の原因が一時的か、継続的なものかを整理し、借入金、資産、設備更新の負担も含めて検討します。売却代金だけでなく、返済や税金・費用を踏まえた手取り額も確認する必要があります。
案件の進捗と、承諾が必要な手続きを踏まえて決めます。早すぎる開示は不安につながり、遅すぎる説明は引継ぎを妨げることがあります。買い手や専門家と相談し、対象者ごとの説明時期・内容を準備しましょう。

運送会社・物流会社のM&Aでは、価格とともに、従業員が働き続けられる環境や、荷主へのサービスを維持できる体制を検討することが大切です。
後継者不在への対応、会社の売却、大手・中堅グループへの参画などを検討している方は、シェアモルM&Aへご相談ください。売却を決める前の段階から、自社の状況と希望条件を整理してみましょう。
シェアモルM&Aでは、会社・事業の売却や事業承継に関するご相談を受け付けています。譲渡企業様は、着手金・中間金不要の完全成果報酬型です。最低成果報酬など、料金の詳細は個別にご案内します。
「運送会社・物流会社を引き継いでくれる相手を探したい」「自社が売却の対象になるか知りたい」とお考えの経営者様は、まずは現状とご希望をお聞かせください。
最終更新日: 2026/10/16
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齋藤 康輔シェアモル株式会社 代表取締役
東京大学教養学部基礎科学科在学中、半導体(シリコン)のシミュレーションを専攻する傍ら、 後に上場する株式会社ムービン・ストラテジック・キャリアにてインターンとして勤務。
在学中に人材会社向け業務システムを開発し、大学卒業後は同社初の新卒社員として入社。
2007年3月に共同出資でマッチングッド株式会社を設立し、同システムを「マッチングッド」として販売開始。
12年の経営を経て、2019年1月に東証プライム上場企業の株式会社じげんに株式譲渡。
2019年9月、売却資金を元手にシェアモル株式会社を設立。
自身のM&A経験を通じて、買い手と売り手の間にある情報の非対称性や、M&A仲介会社が提供する付加価値に課題を感じ、 自身が心から依頼したいと思える、付加価値の高いM&A仲介サービスを目指して、IT・AI技術をフル活用したM&A仲介事業「シェアモルM&A」を展開中。